今、さかんに研究が進められている「氷温技術」を簡単に言えばこうなるのでしょうか。鳥取県米子市 氷温研究所で開発されたこの技術は、氷点下=凍結であるという常識に疑問をもつことからスタートしました。
■はじめに・・・
夏の早朝畑でかじるキュウリ、炎天下でかぶりつくトマト、脂ののった秋サバ・・・。
その季節だからこその代え難い味わいです。
八百屋や果物屋の店頭には年中さまざまな野菜や果物が並べられていますが、やはり旬のおいしさは格別 のものがあります。
古来から人々は、旬の時期に身近でとれるものを食べ、そしてその土地の風土を生かしながらよりおいしく味わえる工夫をし、さらに気候に合わせて保存するための知恵をしぼり、長い年月をかけてたくさんの傑作を生み出してきました。
寒さや雪を利用した雪納豆や凍み豆腐、凍み大根はその一例です。
■現在・・・
現在、季節を問わず店頭に並べられる食品は、自然との関わりを失い機械処理されたものばかりになってしまい、味気ない気持ちで口に運ぶこともしばしばです。
何ものにも代え難い旬の味を特殊な技術でよみがえらせることができれば、いつも本当においしいものが味わえるはず。
実は今、夢のようなすばらしい技術がすでに開発されているのです。 それが「氷温」です。
■氷温とは・・・
簡単にいうと、生物が凍る直前の温度のことです。私たちは零度になると、何でも凍ってしまうと思いがちです。
ところが、凍る温度は生物によって差があります。ほとんどの生物はマイナス一度から五度くらいの温度では凍らず、冬眠状態になります。ものによって異なる氷結点を調査・研究し、氷点下でありながら未凍結の温度領域を「氷温」と命名。
この温度域を「氷温域」といいます。氷温域では、生物は凍らないように体内から不凍液のようなものを出します。その不凍液が糖類であったり、グルタミン酸などのアミノ酸であったり。つまりおいしさの元なのです。
この氷温の状態を人工的に作ってやることで、生物のうま味を引き出そうというのが「氷温技術」です。最近は氷温技術が鳥取米に採用され、お米がとてもおいしくなると評判を呼んでいます。